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「ものづくり」を支える「生産管理」

ネクスト・サポート(代表)

全国航空機クラスター・ネットワーク(登録専門家)

グローバル・ネットワーク協議会(分野別エキスパート)

神戸航空機クラスター(連携コディネータ)

赤 信彦

【その1】

1.はじめに

21世紀は、IT、IoT、AIの時代となり、今日現在世界の売上トップ10はGAFA等のIT企業が多く占めている。技術革新は果てしなく続き、日常生活にもインターネットが浸透し、様々なサービス、文化が展開されている。工業社会でもスマートファクトリーを目指し、インダストリー4.0として進展し新しい時代が築かれようとしている。

海外旅行、海外ビジネス、ロジスティクスの増加により航空機の需要も増加し、航空機製造業においても、量産ライン、ロボットを用いた組立ライン、自動化された加工工場となり、QCD(品質確保、コストダウン、納期確保)の更なる向上を目指し改善され続けている。

本文では「ものづくり」の原点が何だったかを昔にさかのぼり考察し、「生産管理」の視点からものづくりの変遷を振り返る。

2.生産管理の歴史

18世紀の半ばから19世紀にかけ英国でコークス製鉄法、蒸気機関、様々な生産設備が開発され、生産量、生産性、省人化は拡大し、産業革命が起り、現在の工業社会の生産体制の原型となり、世界経済は拡大していった。

工場制機械工業に発展した結果、生産性の向上と省人化による失業者の増加という技術革新の光と影は、ベルギー、フランス、アメリカ、ドイツ、ロシア、日本へ広まり、雇用対策、需要と供給のバランス、ニーズとシーズのマッチング、マーケットの拡大等、新たな課題が発生し現在に至っている。増加、変動する生産量に対応し、ものづくりの永遠のテーマであるQCDの向上に対応し、生産管理の役割は大きくなっていった。

20世紀になると、米国のテイラーにより科学的管理が提唱され、現代の経営学、経営管理論、生産管理論の基礎の一つとなった。併せて、IE(インダストリアル・エンジニアリング),VE(バリュー・エンジニアリング)も発展していった。

米国では、1890年に大量生産に対応するためアセンブリーラインを用い、アメリカ初の自転車製造会社が創業した。1901年には、自動車生産にもアセンブリーラインが導入され、1908年には、T型フォードの量産にも適用され20年間で1500万台生産された。1914年には、ベルト・コンベア方式が導入され大量生産方式の基本形が完成された。

3.日本の生産管理

明治維新後、重工業、鉄鋼、繊維等の生産増強が進んだが、人手によるものが多く、機械化は遅れていた。日露戦争ごろ軍需産業の国産化が急務となり、重工業、鉄鋼、工作機械、等の国内生産が急増した。第一次世界大戦後には、日本の造船力は米国、英国に次ぎ世界第3位となり国産比率も9割となった。1929年には豊田自動織機の特許を英国に譲渡契約し織機の性能は世界的になった。

第二次世界大戦中では、戦艦、飛行機の製造に「生産管理システム」を開発し、品質確保、工期短縮に大きく寄与した。(呉市の大和ミュージアムにも説明資料が展示されている)

戦後、日本の自動車製造の生産方式は、トヨタ生産方式(TPS)、ジャストインタイム(JIT)方式が開発された。生産性向上、コストダウン、納期確保、だけでなく、‘必要なものを必要な時に必要なだけ生産する’という思想で不良在庫の低減に寄与し経営危機を乗り越えた。アパレル業界に至るまで世界のあらゆるものづくり産業に影響を与え、1980年には自動車の生産台数は世界一となった。

プラザ合意後の急激な円高にも対抗し、上位を維持し続けてきたのも、徹底したTPS、JIT、改善活動、グローバル化、優れた品質管理の賜物である。

航空業界においても、日本の「生産管理」、「品質管理」は海外の機体、エンジンメーカーにも大きな影響を与え、日本からコンサルタントを呼び、TPS、JITを導入し、工場内には「KAIZEN」、「KANBAN」と表示され、機体の組立作業も自動車のようにムービングラインに乗せられている。

4.日本の航空業界

戦後解体された日本の航空機産業は、1952年に再開され、1958年には戦後初の国産開発機である自衛隊練習機が初フライトした。1962年には、国産旅客機YS-11が開発され米国の型式証明を取得し、182機製造し着実に進展していった。1980年頃から767(Boeing) の機体、装備品の国内生産がスタートし、RB211(RR)エンジンは‘パートナー契約’により国内生産が開始され、日本の民間航空機産業の本格的な幕開けとなった。

機体の国内生産は777、787(Boeing) 等と続き、エンジンはTRENT1000(RR)、GEnx(GE)、TRENT-XWB(RR)、PW1100G(PWA)等の共同開発、パートナー契約(RSP)により国内生産が継続されている。

民間航空機製造の市場は、2015年には5年間で1.1兆円から1.8兆円に増加し、2030年には3兆円を超える予定である。民間航空機産業は、量産体制になり品質管理、生産管理、改善活動は更に重要となる。変動する経済社会の中で、欧米の航空機メーカーは確実性の高い20年分のビジネス計画を発表し、グローバルな生産体制を目指している。(Airbus社、Boeing社は自社の民間航空機のマーケットリサーチを機種毎に実施し、定期的に更新しホームページで公開している。民間航空機の需要は、東南アジアを中心に増大し、日本の製造分担も増加していく。)

5.これからの「航空機製造の生産管理」について

●航空機の生産管理は、品質保証のファクターが重要で、トレーサビリティー、形態管理、工程管理、不具合管理、等が主要である。

今後、本格的な量産に伴い、ライン化、ロボット化、自動加工が更に推進され、それに対応した工場レイアウト、生産管理(生産計画、実績管理)が更に必要となってくる。

需要と供給、生産量に合わせ、工場レイアウト、人員配置、アウトソース化の計画、実施が重要である。

更に、IT、IoT、AIに対応するために生産技術、生産管理、品質保証、等のデータベース化が重要である。航空業界では、これらのデータベースの構築は進んでいる。

スケジュール、納期管理だけでなく工数、マシン時間、材料、原価、全てのリソース管理Tier1,2,3の連携・作業分担がポイントとなる。生産量、企業の規模、特性に合わせ最適なシステム規模、機能とすることが重要で、工場の進歩とともに改善が必要である。

 

*次回【その2】は、具体的な実務の視点で生産システムを説明する予定である。