NAMAC事務局 平上 雄一
皆様は、ワークショップという言葉を耳にされたことがあると思います。
広義には人が集まって話をする場のことなので、複数の講演が開かれる会をワークショップと呼ぶこともありますが、これからお話しするワークショップとは、複数の方々がほぼ対等な立場での話し合いをして、新しい気づきを得る機会のことです。ここでは、自由なコミュニケーションを可能とするための「安全・安心」が大前提となるため、その場つくりの専門家として、わたくしたち「ワークショップデザイナー」の必要性が高まってきました。
私は、現在日本航空宇宙工業会に所属し、NAMACの事務局を務めていますが、それまではメーカーで新規事業開拓を担当していました。この活動で新しいアイデアを掘り起こすために若手社員を集めた検討会を開き、ワークショップの手法を活用してきました。その際に、文部科学省の支援する「ワークショップデザイナー養成講座」の存在を知り、青山学院大学のコースで約4か月間学んで、ノウハウ、資格と多くの仲間を得ました。現在国内に2000人以上のワークショップデザイナーが存在し、人々の発想を広げながらつながりを構築しています。
【青山学院大学 社会情報学部 ワークショップデザイナー養成講座HP】
ワークショップは、大きく分けて3つの目的のために使われます。
一つ目が「技能や知識の学習」、二つ目が「アイデアの創出」、三つ目が「関係の構築」です。
多くの場合、これらが同時並行的に達成されるのですが、開催する目的に合わせて重点項目を定め、プログラムのデザインを行います。また、現場で参加者の反応を見ながら、成果が最大となるように、時間配分や内容をリアルタイムに見直すファシリテートを行います。
2019年10月の第2回NAMACセミナーでは、全国の航空機クラスターの皆さんに「関係の構築(ネットワーキング)」を目的としたワークショップを展開しました。企業や支援団体の方25名に集まっていただき、「これから5年のうちに達成したい目標」を各人に事前に考えてきてもらいました。老若男女混成の5人のグループに分かれて、各一つのテーマに絞り込み、その目標のためにどんな協力ができるか、また目標を提示した企業はさらにどんなことをしたらよいかについて、役職などの肩書を外してアイデアを出し合い、討論いただきました。
アイスブレーク、自己紹介を経て、アイデアを相談するステップを4段階に分けて、1分単位で時間を区切った作業を行うこと約2時間。多くの参加者が「こんなに頭を使ったのは久しぶり。」との感想とともに、晴れ晴れとした顔で帰路につかれました。
【NAMAC関連ページ】 https://namac.jp/seminar/4158
【今回のプログラム】
1. アイスブレーク(しりとり落書き)
2. 自己紹介~目標説明
3. グループの目標選択
4. 課題解決への寄与アイデア抽出(個人作業、ブレインライティング)
5. アイデアの持ち寄り~整理~タイトルへ(親和図法)
6. マトリックスへの配置~方法選択(ペイオフマトリックス)
7. ビジネスアイデアシートの作成・図解
8. 成果発表
この活動の直接的な成果は、課題に対するグループメンバーの協力を含めた解決方法への気づきですが、結果的により高い目標の達成が視野に入ることも理解いただけます。また当然のことながら、これだけ密な話し合いを行うと、社長さんであれ新入社員であれ、素の部分をさらすことになりますので、名刺交換とは比べ物にならない関係構築が達成されます。実際に今回の参加者のほとんどの方から、「有益でした。」とお礼の言葉を頂くことができました。またその後、同じグループになった方に講演を依頼されたり、商談を始めたりしているというご連絡もいただいています。
今回の事例に基づき、さらにプログラムに磨きをかけて皆様のネットワーク構築をご支援したいと考えておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。皆様の御要望に応じて出前講座も検討させていただきます。
今回は、クラスター関係者の全国的なネットワーキングの場でしたので、比較的遠い方とのご縁をつなぐことになりましたが、参加された地方の支援機関の方からは、ご自身のクラスターの中での絆強化に利用したいとの声が寄せられ、実行に向けた検討が始まっていると聞いております。
【参考文書のご紹介】
発想法の分類など・・・
・イノベーションパス 横田幸信(東京大学i.schoolディレクター/i.labマネージング・ディレクター)著
日経BP社 2016年7月発行
ビジネスモデルの表現法など・・・
・図解 ビジネスモデル・ジェネレーション・ワークショップ 今津美樹著
株式会社翔泳社 2014年6月発行
・バリュー・プロポジション・デザイン アレックス・オスターワイルダー他著
株式会社翔泳社 2015年4月発行