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【コラム】検査データの改ざん防止とコンプライアンス戦略(第1回)

株式会社ティ・エフ・マネジメント
代表取締役 門間 清秀

 

昨今の“検査データの改ざん”事案をみて、コンプライアンス遵守を経営リスク軽減につなげるコンプライアンス戦略について紹介します。

航空宇宙産業におけるコンプライアンス遵守といえば、法令・規制要求事項、顧客要求事項の遵守です。法令・規制要求事項の遵守対象組織の多くは、航空機、航空機エンジン、各種装備品の設計・製造・修理等を担う大企業が該当しています。顧客要求事項の遵守については、すべての企業が関係します。

さて、AS/EN/JIS Q 9100:2016で、従来になかった画期的な要求事項が規定されました。皆さんご存知でしょうか。顧客と供給者間での引き合い、契約において不一致がある際の調整事項です。以下は、規格箇条8.2.3「製品及びサービスに関する要求事項のレビュー」の事項です。

 “このレビューは、組織の該当する機能と調整しなければならない。このレビューにおいては、顧客要求事項が満たされない又は部分的にしか満たされないということを組織が判定する場合、組織は、相互に受入可能な要求事項を顧客と交渉しなければならない”

ここで、組織を「営業部」と読み替え、該当する機能を「設計部、製造部」と読み替えれば、いかがですか。航空宇宙防衛組織の引合い、契約交渉段階の規格要求事項として画期的な事項であることを示しています。上流プロセスでの契約要求事項の課題・問題は、下流プロセスの業務では修正できません。コンプライアンスの遵守は、上流プロセスでの改革が優先事項でもあります。

一方、航空宇宙産防衛産業における製品、特に材料の購入サイド(顧客)として“検査データの改ざん”された材料を易々と受入れないよう、AS/EN/JIS Q 9100:2016箇条8.4.2の要求事項では、次のように規定しています。

“外部提供者の試験報告書が、外部から提供される製品を検証するために利用される場合、組織は、その製品が要求事項を満たしていることを確認するために試験報告書のデータを評価するプロセスを実施しなければならない。顧客又は組織が、材料を重大な運用リスク(例えば、クリティカルアイテム)として識別する場合、組織は、試験報告書の正確さの妥当性確認を行うためのプロセスを実施しなければならない。”

 上記の要求事項は、AS/EN/JIS Q 9100:2000版はもちろん、1950~1990年代の米軍品質管理関係スペックMIL Q 5923C、MIL Q 9858A時代からの慣習として要求されてきました。私が勤務していた三菱重工名古屋航空機製作所の品質管理部では、米国から購入する材料に対して、メーカーをランダムに選定し、化学分析、強度試験等を実施し、素材メーカーをけん制していたのです。日本流でいうと“性悪説”による検証ですが、米国では当たり前の活動なのです。

顧客の要求する製品を市場の最終顧客に提供するには、製造側の品質確保の努力と購買側の品質検証の両社、両面からの努力が必要なのです。

次回は、日本独自のコンプライアンス戦略のガイド、SJAC 9068Aの要求事項を紹介します。